職場では、男性は「ぼく」はやめて「わたし」、女性は「わたくし」というべきでしょう。
男性も接客・応対の場合は「わたくし」がいい。
日本語で自分をさす言葉(人称代名詞)はたくさんありますが、いちばん聞きよく、また男女どちらでもつかえるのが「わたくし」です。
「私」という字は、元来「わたくし」と読むのが正式で「わたし」は略語です。
また「僕」は、「私」にくらべると、かなりぞんざいな言葉(本来、男の召しつかい、下僕の意味で、謙遜の意味をふくむ)ですから、男性もせめて「わたし」といわないと、ビジネスで対等なつき合いをしていないことになってしまいます。
また女性は、男性の「ぼく」に相当する言葉をもたないので、「わたくし」といわないと、ぞんざいな印象を相手に与えてしまうことになります。
しかし、職場で、ビジネスのうえで「わたし」「わたくし」をつかうのは、たんに人称代名詞の用法だけの問題ではありません。
「です」「ます」と「わたくし」をつかうことで、言葉づかいが自然に改まることにあるのです。
たとえば、何かミスをして、それを素直に認めて謝るようなとき、「わたくしの」ではじめれば、
「わたくしの不注意でした。ご迷惑をかけてたいへん申しわけありません。」
という具合に、ていねいな言葉づかいが自然に出てくる。
はじめの「わたくし」と語尾の「です」「ます」の間にはぞんざいな言葉が入りこむすきがないからです。
「わたくし・・・です。」「わたくし・・・ます。」 にはこういった効用もあるのです。
大橋直久