現在の安売り問屋に流れてくる「検査不合格品」とは、どういうものか。
たとえば若い人に人気の高いオーディオ・セット、いわゆるステレオ・セットには、こういうものがかなり含まれている、といわれている。
検査に不合格だからといって、不良品ということでは全くない。
日常の一般人の使用には無関係のところで下される「不合格」の評価は、ステレオのようなきわめて微妙な音質を要求されている音響製品には、元来多いのであり、メーカーの品質維持の厳しい姿勢が生んだ、ある種の犠牲者といってよいものである。
音響の専門家でない限り問題にする必要のない、あるいは気がつくことさえないレペルの「不合格」なのである。
たとえば必要以上に大きくボリュームをあげた時に出る音の歪みであるとか、よほど聴覚の鋭い人でも聞き分けることはできないが、検査基準を機械的にみれば超えてしまうチューニングのズレなど、不合格とはいえないにしろ、メーカーが胸を張って出荷するには若干の問題があるような製品二級品、B級品は、正規の流通ルートには流すことのできないものである。
また、オートメ化された工場では、一台の不合格品が発見されると、その前後につくられた数台、時には数十台、数百台の製品が、まとめて全部不合格品となる場合がある。
これもメーカーの慎重な、厳しい検査基準が生んだ現象といってよい。
こうした場合に、現金で安く、これら「不合格品」を仕入れてくるのが、安売り問屋の人々というわけである。
大橋直久